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ペットの熱中症:予防策ともしもの時の対処法

前回のコラムでは、熱中症に関する解説をしました。熱中症は重症化すると命に関わる病気ですが、異変に気づいて適切なアクションを取ることで重症化を防ぐこともできます。今回は熱中症にならないための対策と、もしもの時の応急処置について詳しく解説します。
命を守るための予防策ー今日からできる熱中症対策
熱中症は、予防が何よりも大切です。おうちでの工夫や、外出時に出来る対策を紹介します。
自宅での対策ポイント
涼しい環境を整える
夏場は原則として室内で飼育し、エアコンや扇風機を適切に使用して室温を管理しましょう。理想的な室温は25〜26℃以下、湿度は50%程度を目安にしてください。
ペットに安全な環境づくり
留守番中に開いているドアから移動して冷房の効いていない部屋に入り、そのまま閉じ込められてしまい熱中症になるケースがあります。また、高齢犬では認知症による徘徊や狭いところに入って出られなくなってしまったり、関節疾患、白内障などによって行動が制限されてしまうことが原因で熱中症になるケースも年々増えています。
カーテンなどで直射日光を避ける
留守番中などは、飼い主さんが出かける前は日陰であっても、日中は直射日光が当たり続ける場合もあります。クレートを置く場所は直射日光が当たらない場所にしましょう。またペットが自分で快適だと思う場所に移動できるようにしてあげることも大切です。
クールグッズを活用してみよう
接触冷感素材のマットや、内部にジェルが入った冷却マットなどを活用したり、凍らせたペットボトルをタオルで包んでケージに入れるなど、工夫してみましょう。凍らせたものが直接身体に触れないように注意してください。
ブラッシングやサマーカットで通気性を良くしてあげよう
抜け毛が残っていると被毛の通気性が悪くなり、蒸れて皮膚トラブルの原因になることも。こまめなブラッシングで、しっかりと取り除いてあげましょう。あいづま動物病院では、シャンプーのみのコースもありますので、お家での手入れが難しい場合は利用してみてください。また、サマーカットで被毛を短くすることで、熱をこもりにくくすることができます。ただし、紫外線対策や皮膚への刺激を考慮し、獣医師やトリマーと相談して決めましょう。
普段からペットの健康状態を把握しておく
ペットの異変にいち早く気づくためには、平常時のコンディションを把握しておくことも重要です。何が平常かがわからないと、何が異常かもわかりません。大体で良いので、普段の心拍数(脈拍数)や呼吸数、体温の数値を覚えておけば、もしもの時の判断材料になります。また、基礎疾患の早期発見・早期治療は、熱中症対策にもつながりますので、動物病院での定期的な健康診断をお勧めいたします。
適正体重の維持
肥満は熱中症のリスクを高めます。日頃からバランスの取れた食事と適度な運動で、適正体重を維持しましょう。
お散歩・お出かけ時の対策ポイント
犬の体感温度は飼い主よりも高い
犬は人と比べて背が低いので、輻射熱の影響を強く受けます。(輻射熱とは自然や建物、体などから出る熱のこと。)散歩は朝の涼しい時間帯と、夕方の日が落ちてきてからがオススメです。散歩前にアスファルトを触って確認しましょう。
散歩コースは風通しが良く、日陰のある場所に
散歩に行く場合は風通しの良い木陰のある公園や日陰のある場所へ。直射日光を浴びたアスファルトはとても熱くなっている場合があるので、あまり長時間歩かせず、芝生や土の上を歩くコースを選びましょう。
こまめな水分補給を欠かさない
いつでも水分補給ができるよう、飲み水を持っていきましょう。また、外出前にも水分を摂らせる習慣をつけると良いでしょう。
冷却アイテムを利用しよう
保冷剤を入れて首や胸を冷やすタイプのものや、濡らして使用するクールベストやクールバンダナなど様々な熱中症対策グッズが最近では多く出ています。こうしたグッズを活用してもよいですし、保冷剤を入れたタオルを首に巻くだけでも効果的です。暑い日には保冷剤がすぐに溶けるので、替えを用意しておくと良いでしょう。しかし、保冷アイテムは補助的な物ですので、気温や湿度に注意してください。
短時間でも車内には置いていかない
エンジンを切ったエアコンの効いていない車内は、窓を開けていても、わずかな時間で熱中症に陥る可能性があります。気温が25℃(短頭種なら20℃)を超えるような日は、少しの時間でも車内に放置することは避けましょう。
もし熱中症になってしまったらー緊急時の応急処置と動物病院へ
万が一、愛するペットに熱中症と思われる症状が見られた場合、落ち着いて以下の応急処置を行い、すぐに動物病院を受診してください。
1. 首、脇、後ろ足の付け根を冷やす!
保冷剤や濡れタオルで、太い動脈の通っている首や脇、後ろ足の 付け根を冷やしましょう。動物病院に着くまでは、保冷剤を入れたタオルやネッククーラーで首を冷やしてあげると良いでしょう。お一人で車にて来院される場合は、ネット包帯やストッキングなどを用いた保冷が効果的です。
2. 涼しい場所へ移動
日陰やエアコンの効いた涼しい場所へ速やかに移動させましょう。
3. 体を常温の水で濡らす
汗の代わりに水で濡らして、気化熱で体の熱を奪いましょう。ただし、冷たい水で全身を濡らすと末端の細い血管(末梢血管)が収縮してしまうため、必ず常温の水を使いましょう。
4. 扇風機やうちわで風を送る
濡らした体に風を当てることで、気化熱で体温を効率的に下げることができます。
5. 意識がある場合は少しずつ水分補給
意識がはっきりしているようであれば、少しずつ水を与えて水分補給を促しましょう。ただし、無理に飲ませようとすると誤嚥の危険があるので注意が必要です。ぐったりしている場合や意識がない場合は、無理に飲ませないでください。
6. 動物病院へ連絡し、指示を仰ぐ
応急処置を行いながら、すぐに動物病院へ連絡し、現在の症状とこれまでの状況を伝え、指示を仰ぎましょう。到着までに行うべきことや、連れて行く際の注意点などを確認してください。
7. 移動中も体を冷やし続けるようにしましょう
熱中症は、発症から治療開始までの時間が、その後の回復に大きく影響します。少しでも疑われる症状が見られたら、なるべく早く動物病院に連れていきましょう。車での来院の場合には、クーラーをかけて車内が冷えてから移動しましょう。
まとめ
熱中症は、適切な知識と対策があれば、十分に予防できる病気です。梅雨が明けて気温が上昇する前に、ご自宅の環境を見直し、愛するペットのための熱中症対策を万全に整えましょう。また万が一、熱中症が疑われる状況になっても、まずは飼い主さんが落ち着いて動物病院に連絡を取り対処しましょう。適切な処置をすれば救命できる可能性が高くなります。軽度の熱中症でも油断せず適切な対応を行わないと重症化する恐れがありますので、受診をおすすめ致します。ご心配なことやご不明な点がございましたら、お気軽にお声がけください。
参照
日本気象協会HP