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2025.06.25

ペットの熱中症:知っておきたい基礎知識と危険信号

梅雨が明けると、いよいよ本格的な夏の到来です。ギラギラと照りつける太陽、うだるような湿気は、人間にとって厳しいものですが、私たちの愛するペットたちにも熱中症は命に関わる非常に危険な病気です。「うちの子は大丈夫」「ちょっとくらいなら」といった油断が、取り返しのつかない事態を招くことも少なくありません。ここでは、大切な家族の一員であるペットたちを熱中症から守るために知っておきたい知識について詳しくお伝えします。

熱中症ってどんな病気?ペットにとってなぜ危険なの?

熱中症とは、高温多湿な環境下に長時間いたり運動したりすることで、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温の調節がうまくいかず、体内に熱がこもった状態のことです。人間の場合も、めまいや吐き気、頭痛といった症状から、重篤な場合は意識障害や多臓器不全に、最悪の場合は死に至る命にかかわる病気です。

ペットの場合も同様で、体温が異常に上昇することで、以下のような深刻な影響が出ます。

臓器へのダメージ

高い体温は、脳、心臓、腎臓、肝臓など、あらゆる臓器にダメージを与えます。特に脳への影響は深刻で、意識障害や神経症状を引き起こし、回復が難しい場合もあります。

血液凝固異常

高体温により血液が固まりやすくなり、血栓ができやすくなります。そのために血液を固めるのに必要な血液中の成分や血小板が消費されてしまった結果、次に血が固まらなくなるという状態になっていきます。このような病態を播種性血管内凝固症候群(DIC)といい熱中症の重大な合併症の一つです。

細胞の破壊

高温は細胞そのものを破壊し、多臓器不全を招きます。

犬や猫は、人間のように全身から汗をかいて体温を下げることができません。犬は主にパンティング(ハアハアと呼吸すること)で、口からの唾液の蒸発や粘膜からの放熱によって体温を下げます。猫も同様にパンティングを行いますが、グルーミングで被毛を濡らして気化熱で体温を下げることもあります。しかし、これらの体温調節機能には限界があり、特に高温多湿の環境下では、あっという間に体温が上昇してしまいます。

熱中症になりやすいペットの特徴

どんなペットでも熱中症になる可能性はありますが、特に以下の特徴を持つペットは注意が必要です。

犬種

短頭種(フレンチブルドッグ、パグ、シーズーなど)は、鼻の穴が狭く、空気の通り道である気道が短くて狭いため、体温調節が苦手です。また、シベリアンハスキーやサモエドなどの寒冷地原産の犬種は、厚い被毛を持つため熱がこもりやすく注意が必要です。また、毛が黒い犬なども熱中症になりやすいといえるでしょう。

猫種

ペルシャ、ヒマラヤンなどの長毛種は熱がこもりやすく、また短頭種の猫(エキゾチックショートヘア、ブリティッシュショートヘアなど)も注意が必要です。

年齢

仔犬・仔猫は体温調節機能が未熟なため、また高齢のペットはその機能が衰えてきたり、体力の低下や、持病を抱えていることも多いため、熱中症になりやすい傾向があります。

体格

肥満のペットは、皮下脂肪が厚く熱をため込みやすいため、熱中症のリスクが高まります。

持病(基礎疾患)

心臓病、呼吸器疾患、腎臓病などの基礎疾患を抱えているペットは、体温調節機能が低下している場合があり、熱中症になると症状が悪化する可能性があります。

暑さに慣れていないペット

普段から室内で過ごすことが多いペットや、急な気温上昇に体が慣れていないペットは、特に注意が必要です。日中の散歩もペットは人よりも地面に近いため、注意が必要です。

こんな症状が出たら危険信号!熱中症の兆候を見逃さないで

熱中症の症状は、その重症度によって様々です。初期症状を見逃さず、迅速な対処をすることが大切です。

初期症状

  • パンティング(ハァハァと浅くて激しく呼吸する様子)が続く
  • 呼吸をする時にゼーゼーするパンティング(ハァハァと浅くて激しく呼吸する様子)が続く
  • よだれが増える
  • 舌や歯茎、結膜などがいつもより赤い
  • 普段よりも脈が速い(頻脈)
  • 動くのを嫌がる

重篤化した場合

  • ぐったりして元気がなくなる
  • ふらつき、歩行が不安定になる
  • 嘔吐や下痢をする
  • 舌や歯茎が、赤紫色になる
  • 舌を出して苦しそうに呼吸をする
  • のどがつまったような音がする
  • 呼びかけに反応しない
  • けいれんを起こす
  • 体温が非常に高い(40℃以上)
  • 立てない、動けない

これらの症状が見られ、熱中症の可能性が高いなと思われた場合は、一刻も早く動物病院を受診してください。熱中症は緊急疾患のため、迅速な対応が必要となります。動物病院へ連れて行く際、可能な限り事前に連絡を入れ、簡潔に状況や状態を説明してから行くとよいでしょう。

まとめ

今回は、ペットを熱中症から守るために知っておきたい知識について詳しく解説しました。大切な家族の一員であるペットたちが、健康で快適な夏を過ごせるよう、一緒に見守っていきましょう。また、犬猫だけでなく他の小動物も暑さが苦手な子もいるのでお部屋の温度設定や湿度、直射日光になど注意し、熱中症対策を充分に行ってください。次回のコラムでは、熱中症対策に関する知識を解説いたします。気になることやご心配なことなどございましたら、お気軽にご相談ください。

 

参照

日本気象協会 熱中症ゼロへ 犬や猫を飼っている人https://www.netsuzero.jp/learning/le09

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