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当院の愛犬の誤食トラブル トップ5! 獣医が教える予防と対処法
愛犬は家族の一員として、私たちの生活に喜びを与えてくれます。しかしながら、好奇心旺盛な犬たちは、意外なものを口にしてしまうことがあります。当院では、毎年多くの犬が誤食(誤飲)で受診します。誤食は消化不良や中毒を引き起こし、最悪の場合、命にかかわる緊急事態になることもあります。今回は、当院のこれまでの診察から、愛犬の誤食で多いものをご紹介します。愛犬の安全を守るために、ぜひ参考にしてください。
おもちゃ

犬のおもちゃは遊びの必需品ですが、意外と危険です。特に、ゴム製、布製のものを噛んで破損させ、飲み込んでしまうケースが目立ちます。当院では、子犬や活発な犬種で多く見られます。おもちゃの一部が消化管に詰まると、腸閉塞を起こし、命に関わる事もあります。閉塞を起こせば症状として、嘔吐や腹痛が認められることがほとんどですが、不完全な閉塞の場合、症状がはっきりわからない事もあります。
もし腸で詰まってしまう大きさの物を食べてしまった場合は、胃より先に進む前でしたら催吐処置(※1)にて吐かせることができる可能性があります。しかし、催吐処置で取り出せない場合は、内視鏡や胃切開を行い取り出します。胃より先に進み、小腸で詰まっている場合は開腹手術で、腸を切開して取り出します。
予防策 : 耐久性の高いおもちゃを選び、遊び終わったらすぐに片付ける習慣をつけてください。犬が一人で遊ばせないよう監視し、破損したらすぐに廃棄しましょう。万一、飲み込んだ疑いがある場合はすぐに獣医に相談してください。小さなお子さんがいらっしゃるご家庭での発生事例が多いので、特に注意が必要です。
※1 催吐処置とは、薬を注射し嘔吐を促す処置です。薬液を口から飲ませて嘔吐を促す場合もあります。誤食直後の場合は異物が腸に進んで詰まってしまったり、体内に成分が吸収される前に催吐処置にて嘔吐を促し取り出します。
尖った遺物など、催吐処置が推奨されないケースもあります。取り出せなかった場合は内視鏡や手術で取り出します。
玉ねぎ(ネギ中毒)

人間の食事に欠かせない玉ねぎですが、犬にとっては有害です。生でも加熱しても、ネギ類全般(ニラ、長ネギ、ニンニクなど)が危険です。玉ねぎに含まれる成分が赤血球を破壊し、溶血性貧血を引き起こします。症状は食後数時間から数日で現れ、元気消失、尿の変色(赤褐色)、吐き気などです。重症化すると腎臓障害を引き起こす恐れがあります。当院では、飼い主が油断した隙にハンバーグや煮物、スープなど玉ねぎ入りの食事を誤食してしまうケースが多いです。
誤食したら、なるべく早く受診することで催吐処置で取り出す事ができます。食べてから時間が経過した場合は点滴などの処置を行います。
予防策 : 食卓に食べ物がある場合は愛犬を近づかせないなど徹底した管理を行ってください。また、食べ物の残りを捨てる時は蓋付きのゴミ箱にしましょう。人間の食べ物を与えないルールを家族で共有しましょう。
飼い主の匂いのついたもの(靴下やマスクなど)

愛犬は飼い主の匂いが大好きです。だからこそ、靴下、下着、マスク、タオルなどを狙って食べてしまうのです。これらは布地が柔らかく、飲み込みやすいですが、胃や腸で絡まって閉塞を起こします。当院では中型犬以上で頻度が高く、洗濯物の放置によることが多いですが、中にはタンスの中から引っ張り出してきてしまう子もいます。症状は食欲不振、嘔吐、便秘です。X線検査で異物を確認します。ただし、布製の物はレントゲンにはっきり映らないため、単純X線撮影では判断できない事もあります。その場合には、バリウムなどを用いた消化管造影検査や超音波検査を行います。
催吐処置で取り出せない場合はおもちゃと同様に手術となります。
予防策:脱いだ衣類は犬の届かない場所に保管して下さい。子犬期にしつけで「取らない」習慣を身につけさせるのも効果的です。
チョコレート

甘いチョコレートは犬の大敵です。カカオに含まれるテオブロミンという成分が中毒を起こします。小型犬ほど少量で危険で、心拍異常、興奮、痙攣、昏睡に至ることもあります。飼い主が目を油断した隙の誤食が多く、症状は摂取後2-4時間で現れ、嘔吐や下痢が初期兆候です。実際には、かなりの量を食べないと中毒とならないので、ほんの少しの量では問題ない事もありますが、どの位食べたかわからないケースも多いので、誤食の事実に気づいたら、速やかに動物病院を受診した方が良いでしょう。
誤食量がわかれば獣医に伝え、活性炭投与や解毒治療を行います。
予防策 : チョコやチョコレート入りの食べ物を犬の届かない高所に保管し、子供がいる家庭は特に注意喚起を行って下さい。散歩中のお菓子ゴミも拾わせないようリードを短くしてください。
ぶどう

ぶどうやレーズンは、犬の腎臓に悪影響を及ぼします。ブドウ中毒は2001年にアメリカで初めて報告され、未だ詳しいことがわかっておらず原因物質も不明ですが、食後12-24時間で嘔吐、多飲多尿、元気消失が現れます。最悪、腎不全で命に関わることもあります。ブドウの皮や干しぶどう入りのお菓子も要注意です。食べても全く症状が出ない場合もありますが、ごく少量でも重症化する場合もあるので油断できません。ブドウが旬の季節は特に注意が必要です。また、干し葡萄は小動物のおやつとして販売されておりますが、犬や猫には危険ですので注意してください。
予防策 : 果物の保管場所を工夫し、犬の届かない棚に保管して下さい。来客時も注意を促しましょう。誤食したら、すぐに受診し、催吐処置などをおこないます。
最後に
今回は当院で特によくある誤食の例を挙げましたが、他にはキシリトール入りのお菓子や人間用の薬やサプリメント、アボカドなども危険です。お子様のいらっしゃるご家庭では子どものおもちゃや消しゴムなどの誤食も起きております。おやつを噛み砕かず飲み込んで詰まってしまうこともあります。焼き鳥など串に刺さったものを串ごと食べてしまうこともありますので、バーベキューなどでも油断しないでください。
誤食は予測不能ですが、飼い主の意識で防げることもあります。犬にとって危険な食べ物を学び、家の中を犬目線でチェックし、危険物を排除して下さい。
もし、異常を感じたら、食べたものと量、時間を記録して受診してください。また、誤食してしまった物の残りを受診時に持参していただけると診察時に役立ちます。早期発見が愛犬の命を救います。