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2025.09.20

モルモットホスティング事業について:命の大切さを学ぶ機会を

近年、教育環境の変化により、学校で動物を飼育する機会が減少しています。かつては多くの小学校でウサギやニワトリなどが飼育され、子どもたちが命と向き合う貴重な経験を得ていましたが、現代ではその機会が失われつつあります。そんな中、愛知県獣医師会では、モルモットを活用した「学校飼育動物ホスティング事業」を展開し、子どもたちに命の大切さや責任感を学ぶ機会を提供する活動を行っております。当院でもホスティングモルモットが在籍しております。本コラムでは、この事業の意義や特徴、そして「レンタル動物とは異なる」点や「モルモットが可哀想ではないか」と感じる方へのご説明をさせていただきます。

 学校飼育動物ホスティング事業とは?

この事業は、愛知県獣医師会が地域の動物病院や獣医師と連携し、小学校にモルモットを一定期間「ホスティング(お預かり)」する形で提供する取り組みです。モルモットは子どもたちにとって比較的おとなしく扱いやすい動物であることから選ばれました。学校では、子どもたちがモルモットの世話を通じて、生き物の命や健康、責任について学ぶことを目的としています。

ホスティング期間中、獣医師が学校と連携しモルモットの健康管理や飼育方法の指導を行います。また、子どもたちには餌やりやケージの掃除、モルモットの様子を観察する「飼育日誌」の作成などを通じて、命を預かる責任を体感してもらいます。ホスティング終了後、モルモットは動物病院に戻り、獣医師による健康チェックを受けます。

愛知県獣医師会のモルモットホスティング事業内容について詳しくはこちら→​​https://aichi-vet.or.jp/business-details/school/hosting-business.html

現在当院ではこちらの2匹が在籍しております。  モルモット(和名はテンジクネズミ)は見た目は小さな身体ですが、食事量は多く、排泄量も多い動物です。テンジクネズミ科でネズミの仲間です。同じテンジクネズミ科にはカピパラがいます。

なぜ学校飼育動物が減っているのか

学校飼育動物は、子どもたちに命の尊さや共感力を育む重要な役割を果たしてきました。しかし、主に以下の理由でその機会が減少しています

・管理負担の増加:教職員の多忙化や飼育施設の維持が難しい。

・衛生面やアレルギーの懸念:動物アレルギーを持つ児童への配慮や衛生管理の厳格化。

・動物愛護や動物福祉の観点:学校での飼育は適していないという意見が出てきた。

こうした背景から、愛知県獣医師会では、学校で動物を飼う際に障壁になる、費用の問題、長期休暇等の世話の問題、動物が病気になった際の問題等を獣医師が協力することで解決し、ホスティング事業を始めました。

ホスティング事業の意義

  1. 命の大切さを学ぶ  

   モルモットの世話を通じて、子どもたちは命を預かる責任感や他者を思いやる心が育まれます。

 

  1. 共感力や協調性の育成  

   子どもたちはクラスメイトと協力してモルモットの世話をします。誰がどの役割を担うか、モルモットの様子をどうやって記録するかなど、仲間と話し合いながら進めることで、協調性やコミュニケーション能力も養われます。

 

  1. 獣医師との交流による学び  

   獣医師が学校を訪れ、モルモットの健康チェックや飼育のコツを教えることで、子どもたちは専門家の視点から動物の命について学びます。また、獣医師という職業への興味や、動物福祉についての理解も深まります。

「レンタル動物」とは異なる点

「ホスティング」という言葉を聞くと、「レンタル動物」と混同されることがありますが、この事業は全く異なる目的と仕組みを持っています。

教育的な目的:レンタル動物は主に娯楽や一時的な体験を目的とすることが多いですが、ホスティング事業は教育の一環として、子どもたちに命の尊さや責任感を教えることを第一に考えています。

獣医師の専門的サポート:レンタル動物の場合、飼育管理は利用者に委ねられることが多いですが、ホスティング事業では獣医師が飼育指導し、定期的にモルモットの健康をチェックし、適切な飼育環境を維持します。これにより、モルモットがストレスなく過ごせるよう配慮しています。

継続的な関わり:ホスティング期間中、子どもたちはモルモットと継続的に関わり、飼育日誌や観察を通じて深い学びを得ます。一方的な「借り物」ではなく、子どもたち自身がモルモットの生活に責任を持つプロセスが重視されます。

「モルモットが可哀想ではないか?」という声への回答

動物を飼育途中で返却できるホスティングに対しては「モルモットが学校を転々とすることはストレスではないか」「可哀想ではないか」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

獣医師会も、子供たちに動物に対する責任を最後まで持たせないホスティングに対して、大きな葛藤を抱えながら活動しています。こうしたことから、以下の取り組みでモルモットの福祉を最優先に考えています。

 

  1. モルモットの健康管理  

   ホスティングに参加するモルモットは、獣医師による健康診断を受けた健康な個体のみを選びます。ホスティング期間中も常に健康チェックを行ってもらい、異常があればすぐに動物病院でケアを行います。

 

  1. 適切な飼育環境の提供  

   学校には事前に適切なケージや餌、床材などを提供し、モルモットが快適に過ごせる環境を整えます。子どもたちにも、静かに触れ合うことやストレスを与えない接し方を指導しています。

 

  1. 短期間での移動の配慮  

   ホスティング期間はモルモットのストレスを最小限に抑えるよう、適切な長さに設定されています。また、移動の際も専用のキャリーケースを使用し、温度や振動に配慮しています。

 

  1. モルモットの幸せを第一に 

   ホスティング終了後は、動物病院で休息期間を設けたり、希望する学校へ譲渡することもあります。当院ではホスティング終了後は院内動物として、フードや飼育用品や環境にもこだわり、病院スタッフ皆で可愛がり大切に飼育しております。

おわりに

愛知県獣医師会の学校飼育動物ホスティング事業は、子どもたちに命の尊さや責任感を伝え、動物との共生を考えるきっかけを提供する取り組みです。モルモットたちは、子どもたちにとってかけがえのない学びの時間を与えてくれます。レンタル動物とは異なる教育的な目的と、獣医師の専門的なサポートにより、モルモットも子どもたちも安心してこの時間を共有できます。

ホスティング事業は地域の皆様のご理解があってこそ成り立ちます。子どもたちが動物から学ぶ姿を温かく見守っていただければと思います。



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