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院内機器紹介2 ~全血球計算(CBC)血液検査機器について 〜
【目次】
さまざまな動物たちの診察を行っているなかで、健康状態を把握するために欠かせない検査のひとつが「血液検査」です。そして、その血液検査の中でも特に基本となるのが「CBC(全血球計算)」です。今回は、このCBC検査を支える院内の機器について、詳しくご紹介します。
CBCとは?
CBCとは、血液中の赤血球・白血球・血小板などの数や形、濃度などを測定する検査です。つまり血液に含まれる細胞の数や質を「数値化」できる検査なのです。
当院で測定している項目
・白血球(WBC):体の中に侵入したウイルスや細菌と戦う細胞。炎症や感染、免疫の異常を調べます。
・赤血球(RBC):酸素を全身に運ぶ重要な細胞。貧血や脱水、出血の評価に使われます。
・ヘモグロビン濃度(Hb):ヘモグロビンとは、赤血球の中に含まれる酸素を運ぶためのたんぱく質です。血液1デシリットルあたりにどれくらいのヘモグロビンが含まれているかを示す数値です。
・血液濃度(PCV/HCT):赤血球が血液全体に占める割合を表します。貧血や脱水の指標です。
・血小板(Plt):出血時に血栓を形成し出血を止める働きを持つ細胞(一次止血)。出血傾向や血液疾患の診断に役立ちます。
白血球分類
・リンパ球(LYM):免疫機能の中心的役割を担う細胞です。体内に侵入したウイルスや細菌などの病原体、異常な細胞を攻撃・排除する働きがあります。
・MON(単球):異物や壊れた細胞を食べて掃除する役割を持つ免疫細胞です。
・顆粒球(GRA):好中球・好酸球・好塩基球をまとめた総称です。主に細菌感染や炎症反応で活躍します。好塩基球はごく少数なので、主に好中球のことを指します。
・好酸球(EOS):白血球の中でも寄生虫やアレルギー反応に強く関与する細胞です。
白血球は、体を守る免疫システムのチームメンバーです。それぞれが得意分野を持ち、協力し合ってウイルスや細菌、異常細胞と戦っています。大切なのは、1種類の白血球だけで判断せず、 全体のバランスを見ることで、より正確に健康状態を把握できます。
これらの数値は、動物が体のどこかで異変を起こしているとき、いち早くそれを示してくれる重要な“サイン”となります。
CBC機器の役割
血液を少量採取し、この機械にかけることで、わずか数分で数値を正確に得ることができます。
これにより、
・急な体調不良の原因を即座に調べることができる
・手術前にリスクがないか確認できる
・健康診断で“隠れた病気”を早期発見できる
といった、メリットがあります。
検査結果でわかること
- 赤血球の異常
・減少 → 貧血(出血、慢性疾患、腎臓病など)
・増加 → 脱水や呼吸器疾患の可能性 - 白血球の異常
・増加 → 感染症(細菌・ウイルス)、炎症、ストレス反応など
・減少 → ウイルス感染、骨髄の病気、免疫低下など - 血小板の異常
・減少 → 出血しやすい状態、免疫性疾患、血栓症、血液のがんなど - 炎症や感染のサイン
・白血球の種類の変化から炎症の重症度や進行具合がわかる - 自己免疫疾患の兆候
・赤血球や血小板が急に減る → 免疫介在性溶血性貧血(IMHA)、血小板減少症(ITP)など - 白血病・骨髄の異常
・異常な白血球が出現、全体的な血球数の異常 - アレルギーや寄生虫感染
・好酸球が増加することが多い
CBC検査の重要性
CBCは、あくまで「きっかけ」や「ヒント」を与えてくれる検査です。
異常な数値が出たからといってすぐに病名が確定するわけではありませんが、「何かが起きている」というサインを見逃さないために非常に重要になります。当院の検査機械では、犬、猫はもちろんのこと、ウサギ、フェレット、モルモットやチンチラ、ハリネズミなどと、さまざまな動物の血液を測定することができます。
CBC検査の具体的な流れ
CBC検査は以下のような流れで行われます。
- 採血:前足や後ろ足などから、少量の血液を採取します。動物種や体格など状況に応じて最適な採血管と注射器を使用します。ウサギやフェレットなどの小動物も採血するため、細い針やシリンジを使うこともあります。
- 機器へセット:採血管を速やかにCBC測定機器に読み込ませます
- 自動分析:機器が血液成分を自動的に分析し、各種数値を算出します。およそ数十秒で完了します
- 結果説明:他の検査結果なども含め総合的に獣医師から、現在の状態や治療方針をご説明します。※貧血や白血球増多など、異常が見られた場合、血液塗抹標本を作成し、直接顕微鏡で観察する場合もあります。
飼い主様に知っていただきたいこと
CBC検査は、動物の健康状態を知るための“基本のキ”とも言える大切な検査です。しかし、数値だけを見てすべてがわかるわけではありません。動物の年齢、症状、生活環境、既往歴などを総合的に考慮することが重要です。
最後に
本記事では、院内機器である「全血球計算(CBC)」についてご紹介いたしました。当院では血液検査を行う機械はCBCの他に、生化学検査機器、血液凝固系検査装置、CRP測定装置装置、ホルモン測定装置などがございます。院内で検査できない項目は外の機関に測定を依頼することもあります。
動物たちは、自分の体調の変化を言葉で伝えることができません。だからこそ、人間以上に検査が大切になります。血液から得られる“数値”という、もうひとつの声に、私たちは真摯に耳を傾けています。当院では、血液検査で得られた情報をもとに、飼い主様にもわかりやすく丁寧にご説明し、より正確な診断と、的確な健康管理につなげてまいります。