刈谷市・大府市で犬・猫・小動物の診療を行うあいづま動物病院の「お知らせ・求人情報」ページ

お知らせ・求人情報

News

コラム-院内設備

2025.07.10

院内機器紹介 1 ~オートクレーブとEOG滅菌器について~

当院では、さまざまな診察や処置、手術が行われています。そうした医療行為において、最も大切なことの一つが「清潔」です。目には見えないウイルスや細菌を確実に取り除くためには、滅菌や消毒が欠かせません。当院では、医療機器や器具の衛生管理のために滅菌設備を導入しています。今回は、院内で活躍している2つの滅菌機器、「オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)」と「EOG滅菌器」についてご紹介します

消毒、殺菌、滅菌の違いとは?

消毒・殺菌・滅菌とどれも似た意味に聞こえますが、実はそれぞれに違う意味があります。

消毒

細菌の活動を弱め、対象物に付着している病原性のある微生物を、害のない程度まで減らします。

殺菌

広範囲の菌類を殺す事です。対象物に付着する菌を殺す行為であり、殺す対象や程度は含まれていません。例えば、100%中10%の菌を殺しても殺菌したといえる為、科学的な精度を示す言葉ではありません。

滅菌

すべての細菌を死滅させる事です。対象物を限りなく無菌に近づけ、微生物が付着している確率を100万分の1以下にすることです。

感染症のリスク回避のため、特に手術や処置に使用される器具類は、毎回きちんと滅菌処理を行う必要があります。その際に活躍しているのが、「オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)」と「EOG滅菌器」という2種類の専用滅菌装置です。

オートクレーブとは?

「オートクレーブ」は、医療機関で最も一般的に使用されている滅菌装置で、高温・高圧の蒸気を使って病原菌やウイルスを死滅させる機器です。ステンレス製の手術器具やピンセットなど、熱や圧力に耐えられる器具の滅菌に適しており、日常的に稼働しています。

オートクレーブでは、器具を密閉された装置の中に入れ、約121〜135℃の高温の蒸気で加圧します。蒸気の力で細菌・ウイルス・芽胞菌までを死滅させることができるため、極めて信頼性の高い滅菌方法です。

メリット

 ・強力な滅菌力があり、細菌・ウイルス・芽胞菌を滅菌することが出来ます。

 ・薬品を使用しないため、薬剤残留の心配がなく、安全です。

 ・比較的短時間で処理できるので、日常的な使用に向いています。

デメリット

 ・熱に弱いものには不適で、プラスチックやゴムなど熱や圧に弱い器具は変形や劣化する可能性があります。

 ・乾燥が不十分になってしまう場合があったり、機種によっては滅菌後に湿気が残るため、滅菌物の保存状態に注意が必要です。
 ・滅菌器のサイズによって、大きな器具や多量の器具の処理が一度にできないことがあります。

オートクレーブは耐熱性のある器具の滅菌において非常に優れた能力を発揮します。当院の機器は再使用される前にこの処理を経て、安心して使用できる状態に戻しています。

EOG滅菌器とは?

「EOG滅菌器(エチレンオキサイドガス滅菌器)」は、熱や湿気に弱い医療器具を安全に滅菌するための装置です。オートクレーブでは対応できない、プラスチック製の器具や電子機器などを対象にしています。

エチレンオキサイド(EO)

「エチレンオキサイド(EO)」というガスを使い、低温・低圧の環境で滅菌を行います。温度はおよそ40〜60℃と非常に低いため、繊細な器具にも対応できるのが大きな特長です。エチレンオキシドガスは、空気中に放出されると細菌やウイルスの細胞に化学反応を起こし、細胞の増殖を阻害して殺滅させます。また、ガスは非常に細かく、器具のすみずみや中空部にまでしっかりと浸透するため、複雑な構造の機器も安心して滅菌できます。しかし、酸化エチレンガスには発がん性や毒性があり、滅菌後には、機器の内部で「エアレーション(ガスの排出)」をしっかりと行い、残留ガスが完全に抜けた状態で器具を取り出す必要があります。

メリット

 ・常温または40~60℃程度で滅菌できるため、プラスチックやゴムなど熱に弱い素材にも使用可能です。

 ・ガスが複雑な構造や密閉包装の中まで入り込むため、器具の内部や狭い部分までしっかり滅菌できます。

 ・密封パッケージごと処理可能で、滅菌後の再汚染リスクを低減できます。

デメリット

 ・滅菌からガスの排出・エアレーション(脱ガス)まで数時間~数十時間かかります。

 ・発がん性・毒性があり、取扱いには厳重な安全対策と換気・排気システムが必要です。

 ・滅菌後にガスが器具に残留することがあり、十分なエアレーションが不可欠です。

当院では、オートクレーブとEOG滅菌器を器具の特性に応じて使い分けることで、すべての医療器具を万全な状態を保つことを可能にしています。

インジケーター

滅菌器に使用する「インジケーター」とは、滅菌処理が適切に行われたかどうかを確認するための指標(確認手段)です。目に見えない菌を相手にする滅菌では、処理の効果を目視で確認することができないため、インジケーターはとても重要な役割を果たします。

 

オートクレーブ用のインジケーターテープ

EOG滅菌器用の表示ラベル(ガス暴露で色変化)

使用される場面

当院では、手術に使用する器具はもちろん、採血時の注射器や、患者様が使用されるお皿、日常診療で用いる各種器具についても、繰り返し滅菌処理を行い、常に清潔な状態を保っています。

最後に

本記事では、院内機器「オートクレーブとEOG滅菌器」について紹介しました。

熱に強い器具には高い滅菌力をもつオートクレーブ、熱や湿気に弱い繊細な器具にはEOG滅菌器を使用し、それぞれの特性に応じた最適な方法で滅菌処理を行っています。目に見えない菌から患者様を守るために、オートクレーブとEOG滅菌機、それぞれの特長を活かして、大切な医療器具を清潔に保ち、飼い主様に安心していただける医療環境を整えています。

過去の記事