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マダニ、SFTSにご注意
【目次】
みなさんはSFTSという言葉を聞いたことがありますでしょうか?東海地方でもマダニによって媒介されるSFTSの症例が急増しており、愛知県も注意の必要性が急速に高まっています。マダニは野生動物が出没する場所に多く生息します。刈谷市は自然豊かで、アライグマやキツネなどの野生動物も生息していますので注意が必要です。
マダニによって媒介される病気、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は動物だけでなく人にも感染します。特に、屋外に出ることのある犬や猫はマダニに咬まれるリスクが高まります。今回はその危険性と予防策について、動物病院からの注意喚起を交え詳しくお伝えします。
SFTSとは?
SFTSとは重症熱性血小板減少症候群のことで、SFTSウイルス(Bunyaviridae科)に感染することで発症する病気で、2011年に中国で初めて報告(※1)され、日本でも2013年に初めて確認されました(※2)。主にこの病気は、SFTSウイルスを保有するマダニに咬まれることで感染します。SFTSウイルスは、感染したペットの唾液などの体液を介して人間にも感染し、重篤な症状を引き起こす可能性があります。
発熱、消化器症状(嘔吐や下痢)、血小板減少による出血傾向などが特徴です。致死率は猫は60%、犬は30%、人間の場合も10〜30%と高く、特に高齢者や免疫力の低下した方は重症化しやすいとされています。SFTSに対しての予防薬は残念ながら現在ないため、感染源となるマダニやSFTSウイルスに感染した動物からの感染に注意するしか予防法はありせん。
また、2023年には人から人への感染も確認されています。動物病院の従事者の感染もあり、2025年6月にSFTSウイルスに感染した猫から感染した獣医師の死亡が確認されています。
ペットでは、犬や猫がSFTSウイルスに感染した場合、発熱、食欲不振、元気消失、嘔吐、下痢、場合によっては神経症状が見られ、死亡に至ることがあります。
屋外で生活する猫などの動物は感染する可能性が高まります。猫のSFTSの症例が増加傾向であるため、注意が必要です。
マダニのSFTSウイルス保有率は地域や季節によりますが、0~数%とされています。
下記資料はヒトのSFTS症例の発病時期(図1)とヒトの死亡数の年次推移(表2)です。SFTS症例の届出が徐々に増加していることがわかります。また、これまでの死亡に至る年齢層は50代以上であることがわかります。(表1)

ヒトの届け出数 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要(2025年4月30日更新)より

ヒトの届け出数 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要(2025年4月30日更新)より

ヒトの届け出数 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要(2025年4月30日更新)より
マダニとは?

フタトゲチマダニの若虫 マダニ調査へ行ってきました-兵庫県立人と自然の博物館(ひとはく) ひとはく blog (hitohaku.jp) 2014年6月3日(山内健生)/昆虫共生系研究グループ)より引用

吸血したマダニと吸血前のマダニ 名古屋市HPマダニの生息調査よりhttps://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000125502.html
マダニは、クモの仲間であるダニの一種で、草や土の中に潜み、動物や人間の血を吸って生きています。マダニは体長が数ミリから1センチ程度で、吸血前は小さくても、吸血後は大きく膨らむことが特徴です。日本では、フタトゲチマダニやヤマトマダニなどが一般的に見られ、森林や公園、河川敷など身近な場所にも生息しています。
マダニは単なる「かゆみ」を引き起こすだけでなく、さまざまな病原体を媒介する危険性があります。その中でも特に注意が必要なのが、SFTSです。
マダニとSFTSのリスクを高める要因
マダニは春から秋(特に5~10月)に活動が活発化します。以下のような状況では、マダニに咬まれるリスクが高まります。
草むらや森林での散歩
公園や草むら、野山など草の多いエリアにマダニは潜んでいるため注意が必要です。
ペットの毛に隠れるマダニ
マダニはペットの毛深い部分(耳の裏、首、腹部など)に付着しやすく、発見が遅れることがあります。
人間への二次感染
ペットに付着したマダニが家の中で落ちたり、感染したペットの体液を介して人間に感染する可能性があります。
動物病院からの注意喚起
動物病院では、マダニとSFTSの危険性について以下のようなアドバイスを行っています。
定期的な予防薬の使用
マダニを防ぐためには、ペット用のノミ・マダニ予防薬(スポットタイプ、経口薬など)が効果的です。これらの薬は、動物病院で処方されるものが安全で信頼性が高いです。特に、散歩やアウトドア、ドッグランなど屋外での活動の多いペットや屋外で生活するペットは注意してください。また、予防をしていないペット同士の接触は避けてください。
※予防薬はペットに付いたマダニを駆除するものです。飲み薬はマダニが吸血してから、駆除されますが、吸血してすぐには病原体は体に入ってこないため、病気も媒介されないことになります。予防薬と合わせて、マダニがついていないかチェックをしてください。
散歩後のチェックと環境管理
散歩から帰宅したら、ペットの体を丁寧にチェックしましょう。特に、耳の裏、首周り、腹部、足の間など、マダニが付きやすい場所を確認してください。マダニを見つけた場合は、動物病院で対応してもらうのが安全です。
また、庭や家の周囲の草を短く刈る、ペットの寝床を清潔に保つことで、マダニの生息環境を減らします。
異変に気づいたらすぐに受診
食欲がない、発熱している、下痢や嘔吐がある場合、すぐに動物病院を受診してください。SFTSは治療薬がなく治療法が確率していないため、早期治療が命を救う鍵となります。動物病院では、血液検査やPCR検査を通じてSFTSの診断を行いますが検査結果が出るまでには数日を要する場合があります。
飼い主自身の予防
ペットだけでなく、飼い主自身もマダニに咬まれないよう注意が必要です。長袖・長ズボンの着用、虫よけスプレーの使用、草むらを避けるなどの対策が有効です。また、ペットがSFTSウイルスに感染している場合、体液(血液、嘔吐物、糞便など)を通じて人間に感染するリスクがあるため、ペットの体調管理には細心の注意を払いましょう。
屋外で過ごす猫に注意
予防などを行っていない屋外で過ごす猫と接触する場合は必ず手袋等を装着し、充分に感染対策を行なってください。屋外で過ごす猫の餌やり中に引っ掻かれ、感染し、死亡した事例もあります。高齢者や免疫の低い方や幼児は予防がされていない屋外で生活する動物を触らないで下さい。
感染を防ぎたい場合は、可能な限り猫は室内で飼育し、屋外に出さないことが重要です。
万が一の対処法
もし人や動物がマダニに咬まれた場合やマダニに咬まれた動物と接触した場合は以下のように対処してください。
人の場合
- マダニの除去:可能な限り早めに医療機関にて除去し、適切な処置を受けて下さい。吸着したマダニの腹部を指で摘まむと、マダニの体液成分が皮膚内に流入しやすくなるので、避けるべきです。吸着して3日以上が経過すると、マダニの口器が皮膚組織と固く接着しているため、除去が困難になります。その場合、無理に引っ張ると、皮膚内に口器がちぎれて残ります
- 経過観察:マダニに咬まれたり、マダニに咬まれたおそれのある動物と接触した後に発熱や発疹、倦怠感などの症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診しSFTSの可能性を伝えてください。SFTSは4類感染症にあたり、届出が必要な感染症です。高熱ではなくても、急速に状態が悪化する場合がありますので注意してください。また、マダニに咬まれるとSFTSの他に日本紅班熱や、ライム病などの感染症の恐れもあります。
※動物病院では人の診察・治療することができません。必ず医療機関を受診してください。
動物の場合
- マダニの除去:動物病院にて除去し、適切な処置を受けて下さい。人の場合と同様、無理に引っ張ると吸着したマダニの口部が残ったり、腹部を指で摘まむと、マダニの体液成分が皮膚内に流入しやすくなるので、避けるべきです。
- 経過観察:マダニに咬まれたり、マダニに咬まれた可能性のある動物と接触した後に発熱や様子がいつもと違い、SFTSを発症した疑いがある場合は、動物病院に連絡をし指示に従ってください。
まとめ
マダニとSFTSは、ペットと飼い主の双方にとって重大なリスクをもたらす可能性があります。知らなかったでは済まされない状況になってきました。しかし、適切な予防策と早期発見により、そのリスクを大幅に軽減することができます。
当院では、フィラリア症の予防(犬)やワクチン注射だけでなく、ノミ・マダニの予防をペットに受けさせることは飼い主さんに求められている最低限のマナーであり、また、飼い主さんやご家族、地域の方や周りのペットの安全を守るために必要なことだと考えています。動物病院は高齢や持病のあるペットも来院します。そしてペット達の飼い主様も来院されます。また、獣医療関係者にも感染者が多いため、私達のためにもノミダニの予防をお願いいたします。
当院ではノミダニ予防は3月〜12月の期間をお願いしております。
マダニやSFTSの事でわからないことや不安がありましたら相談下さい。マダニ対策を徹底し、ペットと飼い主様やご家族の健康を守りましょう。
※1
Fever with Thrombocytopenia Associated with a Novel Bunyavirus in China
Xue-Jie Yu ら New England Journal of Medicine 2011
※2
The First Identification and Retrospective Study of Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome in Japan Toru Takahashi ら Journal of Infectious Diseases 2014
参考
国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト 感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要(2025年4月30日更新)https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/article/sfts/020/20250523144135.html(2025/6/14参照)
厚生労働省 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A(第7版 令和6年8月2日作成)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E5%86%85%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%A7,0%EF%BD%9E%E6%95%B0%EF%BC%85%E3%81%A7%E3%81%99%25E3%2580%2582(2025/6/14参照)
名古屋市 感染症対策・調査センター マダニの生息調査https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000125502.html(2025/6/14参照)