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ペットの眼を守る!当院の眼科診療と検査のご紹介
【目次】
こんにちは、あいづま動物病院の院長です。人を含め動物の眼は、感情を伝えたり、周囲の世界を認識したりする大切な器官です。しかし、アニコム損害保険の「家庭どうぶつ白書2024」によると、犬や猫の眼科疾患は動物病院への来院理由として、消化器疾患、皮膚科疾患、耳の疾患に続き4番目に挙がっています。主な眼の病気としては、白内障や結膜炎、緑内障、角膜潰瘍などがあり、重症化すると失明してしまう恐れもあるため、眼のトラブルは早期発見・早期治療が重要なのは言うまでもありません。今回は、実際に当院で行っている眼科検査についてと、エキゾチックアニマルへの対応について、飼い主さんにわかりやすくご紹介します!
なぜ眼科検査が必要?ペットの眼の健康を守るために
動物は自ら動物病院を受診することができないため、ペットの眼の異常は、飼い主さんがいかに気づいてあげられるかが非常に重要です。たとえば、わかりやすいサインとして「目が赤い」「涙が多い」「目をこする」といったようなものから、いつもよりじっとしていて動かない、と思ったら実は視覚が消失していたなんてケースもあります。犬では白内障や結膜炎、猫ではブドウ膜炎などが多く報告されており、放っておくと失明につながることも少なくありません。また、子宮蓄膿症や前庭障害(脳の病気)などの眼以外の疾患、全身性疾患の症状の一部が眼に現れる事もあります。いずれにしても定期的な眼科検査で、早期に問題を見つけることが、ペットのQOL(quality of life:生活の質)、QOV(quality of vision:視覚の質)を保つカギです。
当院での眼科検査

スリットランプを使用して目の検査を行っています。
当院では、犬や猫を中心に、フェレットやウサギなどのエキゾチックアニマルにも眼科検査を提供しています。エキゾチックアニマルの場合は、犬や猫ほど頻繁ではありませんが、動物種の特性や眼の構造、種特有の病気の特徴を考慮した診察を心がけています。以下で、当院で行なっている眼科検査をご紹介します。

左から 眼底検査機器 眼圧検査機器 涙液量試験紙 フローレス試験紙
1. 眼圧検査(トノベット):緑内障を早期発見
眼圧検査では、トノベットという専用の機器を使って、眼球内の圧力を測定します。この検査は、緑内障の診断に欠かせません。緑内障は眼圧が上昇し、視神経を圧迫する病気で、放置すると失明のリスクがあります。トノベットはペットの眼に軽く触れるだけで測定でき、痛みもほとんどありません。犬や猫ではもちろん、必要に応じてエキゾチックアニマル(例:ウサギ)でも行うこともあり、眼圧異常を早期にキャッチします。
2. 涙液量検査(シルマーティアテスト):ドライアイをチェック
涙液量検査(シルマーティアテスト)は、涙の量を測定する検査です。専用の試験紙を下眼瞼の内側に置き、涙がどれだけ出ているかを確認します。この検査は、ドライアイや角膜炎の診断に役立ちます。涙が少ないと、眼が乾燥して傷つきやすくなり、感染症のリスクも高まります。特に、シーズーやコッカースパニエル、ブルドッグなどでは涙の分泌低下が見られることがよくあり、定期的なチェックが大切です。
3. スリットランプ、細微灯検査:眼の表面を詳しく観察
スリットランプ(細微灯検査)は、細い光を当てて眼の表面(角膜や結膜)や内部(虹彩や水晶体)を詳しく観察する検査です。白内障や角膜潰瘍、ブドウ膜炎などの異常を発見できます。高齢犬(一般的には6歳以上がシニア)になると、特に視覚異常がなくても実際検査を行ってみると初期の白内障(初発白内障~未熟白内障)が見つかることも少なくありません。また猫においては、ブドウ膜炎が全身疾患と関連していることが多く、眼の異常で来院され、実際は重篤な感染症の初期症状だった、というケースもあります。またウサギよりも小さいエキゾチックアニマルでは、じっとしてくれないことが多く、眼のサイズも小さいため、犬や猫よりも検査で得られる情報が少なくなってしまいますが、眼の異常がみられた場合はそのまま放置せず、まずは一度診察をしてあげたほうがよいでしょう。
4. フルオロセイン染色検査:角膜の傷を可視化

暗室で検査を行います。
フルオロセイン染色検査は、角膜の傷や潰瘍を見つけるための検査です。眼に安全な蛍光染料(フルオロセイン)を滴下し、特殊な光を当てると、傷がある部分が緑色に光ります。この検査は、犬や猫の角膜潰瘍や外傷の診断に有効です。エキゾチックアニマルでも、たとえばハムスターの眼の傷を確認する際にも役立ちます。また、犬や猫、ウサギなどの鼻涙管の閉塞を確認する場合も用います。
5. 眼底検査:眼の奥をチェック
眼底検査では、眼の奥にある網膜や視神経を観察します。専用のレンズや機器を使い、網膜剥離や高血圧による網膜症などを診断します。犬では緑内障による視神経乳頭の変化、猫では高血圧やブドウ膜炎が原因で異常が見られることがあります。エキゾチックアニマルでは実施が難しい場合もありますが、可能な限り対応し、全身疾患との関連も考慮します。また、犬において突然視覚を消失してしまう突発性後天性網膜変性症候群(SARD)、徐々に不可逆的に視覚を消失してしまう進行性網膜萎縮(PRA)の診断にも役立ちます。
6. 視覚検査(綿球落下試験・迷路試験):視覚を評価
視覚検査では、ペットの視力を確認します。綿球落下試験では、綿球を目の前で落とし、ペットが動きを追うかどうかを観察します。迷路試験では、障害物を置いたコースを歩かせ、視覚に基づく反応を評価します。これらの検査は、白内障や緑内障による視覚低下を判断するのに役立ちます。片側だけ視覚の喪失が考えられる場合。光を透過させない黒い特殊なコンタクトレンズを装用して行う場合もあります。動物においては一般的に「視力」の評価は容易ではなく、評価するのは見えているかどうか、「視覚」になります。
7. 超音波検査:眼の内部を詳しく調べる
超音波検査は、眼の内部(水晶体や網膜)を画像で確認する検査です。白内障で水晶体が濁って眼の奥(眼底)が見えない場合や、腫瘍が疑われる場合に有効です。超音波検査は表面麻酔を施し非侵襲的で、痛みを与えることなく実施できます。エキゾチックアニマルでも、眼のサイズや構造に応じて慎重に対応し、異常の有無を調べます。
エキゾチックアニマルの眼科診療について
当院では、ウサギ、フェレット、ハムスターなど(時には爬虫類)のエキゾチックアニマルにも眼科検査を行なっています。エキゾチックアニマルの眼は、犬や猫と比べて小さく、構造も異なるため、専門的な知識と慎重な扱いが必要です。たとえば、ウサギは涙腺の異常や角膜の傷が起こりやすく、適切な検査で早期発見を目指します。犬や猫ほど頻繁ではありませんが、飼い主さんのご相談に応じて可能な範囲で対応します。
また、これらの検査において、動物が検査に協力的でない場合、鎮静や麻酔をしないと検査を行えない場合もあります。
ペットの眼の健康を一緒に守りましょう
当院では、眼圧検査(トノベット)、涙液量検査(シルマーティアテスト)、スリットランプ細微灯検査、フルオロセイン染色検査、眼底検査、視覚検査(綿球落下試験・迷路試験)、超音波検査を活用し、ペットの眼の健康を守っています。犬や猫だけでなく、エキゾチックアニマルにも対応し、飼い主さんの不安に寄り添った診療を心がけています。
ペットの眼で気になることがあれば、どんな小さなサインでもご相談ください。その中には治療が必要のない場合もありますが、飼い主さんがふと気付いた「最近、目やにが多い」「物にぶつかるようになった」といった変化が、治療のきっかけとなり、ペットの視覚を守る大事な一歩になるかもしれません。眼科疾患は決して珍しくなく、飼い主さんがその異常に気づいてあげられるかにかかっていると言っても過言ではありません。早期発見で、ペットの明るい視界と幸せな生活を一緒に守りましょう!